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福地 祐介 | 渡良瀬滑走路 Gate : 17

福地 祐介 | 渡良瀬滑走路 Gate : 17

Arrive : USA / ALASKA Date : 21 Jul. 23

今回、撮影で「氷河」にも行ったのですが、僕の知っている地球ではない、全く別の惑星へ降り立っている感覚を覚えました。

アメリカ撮影記 ① ~ 時を越えて ~

 ユナイテッド航空、席番号41L、窓側。
 12時間の長距離フライトがもうすぐ終わろうとする頃、今回の撮影地、アラスカの大地が目下に広がる雲の間に淡く透けて見えてきた。
 台湾のドラマ撮影でアメリカロケが敢行され、アラスカに4日間、その後ニューヨークで6日間の撮影が予定されている。撮影後も、現地で同じ表現の世界に生きている様々な人達と出会うべく、個人的に数日間ニューヨークに留まる予定だ。とは言っても全く伝手はないので、何とか自力で出会いをこじ開けていくしか方法は無いのだけれど。
 そんなこれからアメリカで過ごす2週間弱の時間に想いを馳せていると、窓の外のアラスカの地が少しずつ違う情感を帯びて来た。
 ちょうど20年前、僕は短期留学でアメリカへ飛んだ。当時から表現の世界に身を置きたいと言う思いはちゃんと心の然るべき処に腰を下ろしていたのだが、そして今、僕は俳優としてメインキャストの1人を演じ切る為にアメリカの地を見下ろしている。
 勿論、嬉しい気持ちは心の奥に湧いて来る。でもまだ重要なシーンを撮り終えた訳でも、現地で将来の鍵となる貴重な出会いに遭遇できた訳でもない。詰まる所、これからの数日間は全て自分自身にかかっているのだ。喜びと緊張が入り混じり、普段感じる事のない色彩の感情で心が満たされていく。
 20年前、「自分の未来は自分で創れる。」そう悟ったアメリカの地。今この瞬間を迎えている僕自身は、当時この地を訪れていた過去の自分に試されている。

著者 : ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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