栃木・群馬県初の公立文化施設付属劇団として、2012年12月旗揚げをした「足利市民プラザ付属シニア劇団 燦 SAN」。以来10年余りの歳月を経て、平均年齢63歳でスタートした劇団員は、今や70代に近づこうとしている。「体調管理が欠かせない。」と笑顔で語る、団員の髙久保勲さんと小林孝子さんに話を伺った。髙久保さんは、燦 SANの初代運営委員長でもある。
「2012年頃はちょうど団塊の世代が定年退職を迎え、人生を振り返る節目のタイミングと重なり、全国的に多くのシニア劇団が結成されました。私たちも、中高年の生きがいづくりをモットーにスタートしました。当劇団は公立劇団なので、足利市民プラザの施設を利用し、稽古場・発表の舞台・大道具の管理などを行っており、他のアマチュア劇団と比べ、恵まれた環境でもあります。」と髙久保さん。日本伝統芸能教育普及協会副理事長も務め、現在は同劇団の顧問として、文化庁からの予算を取り付けるなど、劇団の活動と国の文化的事業を結ぶ要となっている。
一方、劇団旗揚げ当時から団員として活動している小林さん。「入団のきっかけは、広報あしかがみに載った、演劇講習の参加募集に応募したことでした。講習終了後、燦の団員募集があり、高校時代演劇部の経験があったことから、50年以上のブランクを経て、舞台に立ってみることにしました。活動を続けることで心も体もリフレッシュし、今では稽古の日が楽しみでなりません。舞台の上では実年齢は関係なく、小学生の少年に、セーラー服をきた女学生、かなり高齢の老人の役もありました。どの役も自分の知らないもう一人の自分を発見することができました。」
燦では、団員それぞれが意見を出し合い、社会の問題提議に繋がり、しかも心をうつ、そんな演目を選んでいるそうだ。また、加納朋之さん(文学座)、佐藤尚子さん(劇団青年劇場)のプロによる演出・指導が行われ、アマチュア劇団であっても作品は常に芸術的なクオリティーにまで仕上げている。
「公立劇団として、子どもたちの教育的な育成にも力を入れています。『こども&シニア演劇養成教室 リーディング公演』では、童話を題材とし、読むだけでなく動きも含めた指導を行っています。さらに高校生、大学生、若い社会人による若手の団員『燦ネクスト』を組織して、世代間交流演劇で活躍してもらっています。」
「演劇は人類最古の芸術とも言われております。演劇を通じ足利市の文化的活動になくてはならない劇団にしていきたいと考えています。そのためにも団員が増えることを期待しています。」
文/松尾幸子