漫画『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』全11巻(武田一義/白泉社 ヤングアニマルコミックス)
1944年に熱帯の楽園・ペリリュー島での日本軍守備隊と米軍の戦闘を舞台に、兵士たちの日常を描いた作品で、戦争体験のない世代が増えるなか、本誌を読んで戦争の悲惨さを感じ取ってほしい。
ペリリュー島は、日本から約3200㎞離れたところにあるパラオ諸島南西部の小島。太平洋戦争中、飛行場が整備されるなど日本軍の重要拠点のため、米軍は約4万人の兵力で上陸。約1万人の日本軍は必死の抵抗を2ヵ月余り続けたが、敗北に終わった。両軍合わせての死者は万を超えたと言われている。そして、日本軍の兵隊は、20歳代前半の若者が大半だった。
平和な日常では見ることができない人間のありのままの姿や、極限状態のなかでの仲間同士の争い、兵士が故郷に帰還することを願っている家族など、米兵や島民の視点からも描いている。
両軍兵士の死闘が繰り返されるなか、人間の感情や思いが狂い始めてくる性的マイノリティ(戦場では、こんなこともあったと思われること)についてもさりげなく描かれている。
戦争体験を文章で語り継ぐものだと硬いイメージがあるが、本誌は漫画なので読み易さがあり読み続けるなかで、不思議にも戦争について考えさせられる、感じることが沢山ある。
終息しないコロナ禍での戦いやロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射などで、世界は不安だらけ。
子供たちへの明るい未来に向けて、両親から聞いた戦争の話や、本で読んだ知識を後世に伝えていくことは、大切なアイテムと思う。
本誌を通じて、戦争という卑劣な行為を後世に伝えていく、こんなことはあってはならない、今だからそんなきっかけにつながれば良いと願う。戦争を知っている、知らない全世代に読んでほしい一冊でもある。
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白泉社
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