「PRP療法」そこに痛みのない未来が!
関節痛に苦しむ人に、新しい治療法を紹介
医療法人KOSSMOS会 理事長 医学博士 剣持 雅彦さん
state of the art
すぐそこまで来た未来の整形外科治療 整形外科的な再生医療
オルソバイオロジックスとは?
元気な高齢者が増えたとされる昨今。国も健康寿命を延ばそうと呼びかけている。 反面、関節痛などの自覚症状を持ち、アクティブな日常から遠のいている人が多いとも聞く。
このような中、関節痛の治療として「PRP療法」といわれる再生医療が注目されている。では、再生医療そしてPRP療法とはどんなものなのか…。
そこで、太田市にクリニックを開設して16年、大学では専門として膝スポーツ班で活動し、現在はいくつかの再生医療関連の論文を作成中という、剣持整形外科クリニック 剣持 雅彦 院長に話を聞いた。
再生医療は人間の組織の再生を狙ったもの
― 再生医療・PRP療法とは?
再生医療というのは、その名の通り人間の組織の再生を狙ったもので、整形外科的な再生医療というのは「オルソバイオロジックス」と呼ばれています。これは、体の細胞を採取して培養する「幹細胞療法」と、血液を遠心分離して作る「PRP療法」に分類することができます。幹細胞療法は、3週間ほどの培養を伴うので、非常に高価(約70~100万円)な治療になります。PRPはそれに比べると、血液を利用しその場でできるので比較的簡便に行えますが、いまだに、施設により手技も知識も金額面も様々なのが現状です。
PRPは、自分の血液を用いる先進的な再生医療です。血液中に含まれる血小板を濃縮して、傷んだ体を治す成分を抽出します。これを自身の体内に戻し、自然治癒力を促す治療法で、痛みの緩和が期待でき、薬剤のように副作用がないこともポイントです。
再生医療等安全性確保法により安全な提供を
― 再生医療の安全性について
2014年11月に、再生医療等安全性確保法が施行されました。再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図るため、再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置や、特定細胞加工物の制度等を定めたものです。提供計画を作成し、認定再生医療等委員会での審査を受け、これを厚生労働大臣に提出し、実施許可を得て、再生医療の提供が開始となります。提供開始後も、治療状況の報告義務があるなど労力を要します。
当クリニックも、許可を得て2015年より提供を開始いたしました。
― 患者さんにとってのメリット、課題について
これまで、関節痛の治癒では人工関節にするなど、入院をして手術をすることが主流でした。ところがPRP療法ならば、外来通院の注射で症状を和らげることができるのが、大きなメリットといえます。
一方、課題としては、提供する医療機関によって、異なるPRP療法を行っているため、再生医療等安全性確保法の対象となるものであるかを見極めることも大切です。また、PRP療法は保険が使えない自費診療であることです。さらに効果は人により異なり、確実な効果の保証には至りません。
しかし近年の報告ですと、複数回の投与で治療効果が向上することが明らかになりつつあります。当クリニックでは、6回投与で約8割の患者さんに効果があり、2~5年間は追加の投与が必要ない状態が続いております。PRP投与前後のケアを大切にし、投与後もMRI、レントゲン画像、リハビリ等によるフォローも行っており、今後、患者さんによっては、追加投与なしで過ごせる可能性も期待できます。あるいは従来の保険内治療で充分となるように、回復する可能性も示唆され始めています。
医療費については、従来全国平均で1回の投与料金が30~50万円となりますが当クリニックでは、1回5万円に設定。6回投与で全国平均の1回分相当になります。
欧米では、怪我をしたらまずPRP療法という認識
― 今後の関節痛との向き合い方は
先日、ボストンで開催された「ISAKOS」の、オルソバイオロジックスのエキスパートミーティングに参加しました。想像している以上に欧米は進んでいて、怪我をしたら、まずPRPという認識のようでした。我々ももっと積極的にプロアマを問わず、スポーツ選手から、手術を余儀なくされる患者さん、そして骨端線が閉鎖する頃の成長期が終わりかけた子どもたちまで、再生医療の検討をすべきだと考えさせられました。
整形外科の治療は今は怪我をしてからはもちろんのこと、悪くなる前に早めの対処、自分の身体に投資するというのが国民の健康意識の高まりと共に非常に大切になってきています。ぜひ躊躇なく私に気軽にご相談ください。
インタビュー・文 松尾幸子
写真 浦島大介
医療法人KOSSMOS会
剣持整形外科クリニック
〒373-0026
群馬県太田市東本町42-1
0276-25-2537
https://www.kossmos.jp/
Profile
剣持 雅彦
けんもち まさひこ/1969年 太田市出身。1996年杏林大学医学部卒業。同年杏林大学病院整形外科学教室入局。以後関連病院(目白第二病院・小山記念病院・聖隷浜松病院・武蔵野赤十字病院)で修業を積む。2007年剣持整形外科・Kスポーツクリニックを開設。