主演台湾映画『動物感傷の清晨』について。
2023年10月13日、僕が主演を務めさせて頂いた映画が台湾全土で公開されました。少し真面目な内容になりますが、折角なので作品について書いてみようと思います。
丁度各国でコロナ感染者が減り出した時期、僕らは約二ヶ月間の撮影に臨みました。映画のテーマは「人間の持つ本能」。監督は全編を通して台詞は25言のみと言う芸術性の高い台本を書き上げ、役者陣に感情と身体表現だけで物語を紡いでいくと言う要求を課しました。僕自身、物語の主軸となる暗い過去を持つ青年と言う役を全うする為、三ヶ月で約15キロの減量を行い、撮影中も食事はおにぎり数個で済ませるなど撮影内外の衣食住全てを役に合わせる生活を送り役柄と向き合いました。
その甲斐あって、完成した作品は北欧の国際映画祭へノミネート。監督と現地に赴き映画人の方々から様々な賞賛の言葉を直接頂く事ができました。
日本に一時帰国する度に、昭和から平成を経て映画やドラマが全く同じスタイルで変化なく令和まで来ている事に驚く事があります。僕の演じている環境では、「演技しない」事でより人を表現し、台詞も感情表現で現せるものはどんどん削り、謂わば「引き算」での表現で現実生活のリアリティへにじり寄っていきます。一方日本の作品は、その逆の論理で作られていると言った印象です。
勿論どちらが正しいと言う事はありません。しかしながら、既に動いている時代の中、独自性を伴う変化がもうちょっと日本にも起き始めても面白いのになぁと、僕としては期待してしまいます。海外にいると、そんな事もちょっと考えたりするのです。