〜 「器」が聴こえる。 〜
明石家さんまさん。
この名前を聞いてまず頭に浮かぶのはどんなイメージでしょうか?
”日本を代表する名司会者”
こうイメージする読者の方は少なくないのではないでしょうか?
たまに日本のバラエティ番組の中でも他の国のバラエティ番組の映像を眼にする事がありますよね。
各国それぞれに日本でいうさんまさんの様な、その国を代表する”名司会者”がいらっしゃるのだと思います。
僕の住む台湾にも、視聴者皆が知っているベテランの司会者の方々がいます。
その中で、台湾の人なら誰もが知る長寿番組で司会をされていた女性の名司会者の方がいるのですが、先日、バラエティ番組ではなく、お芝居の現場で共演する事となりました。
実は、僕は普段、出演作の宣伝(日本でいう番宣というやつです。)以外ではバラエティ番組のお仕事はお受けしていないのですが、もちろんこの方がどれだけ台湾の皆さんから愛される著名な司会者であるかは存じておりましたし、それこそ長年台湾のバラエティ界の中心で活躍されてきたと誰もが認めるベテランの域の方です。
僕はその方とは全くの初共演でしたし、丸一日2人だけで演じ切るシーンが山積みでしたので少なからず緊張感を持って撮影現場へ向かいました(毎回初対面の方とのシーンは緊張します。)。
撮影が始まり、順調に撮り進めていく中で、ふと会話が生まれる瞬間がありました。
僕の中で、その方は台湾の明石家さんまさんですから「何か気の利いた一言でも会話に放り込まないと。」と余計な事を考えながら会話をしていたのですが、その際、その方が僕に言った内容が僕の予想を180度覆す一言でした。
「私は普段役者じゃないから、こうした演じる現場はとても緊張するんです。」
僕は常々、日常生活を送る中で思っている事があります。
それは、どんなにとある会社で、もしくは社会的に地位のある方でも、その自分のフィールドを一歩出てしまえばその人個人の肩書きなんていう物は本来音も立てる事なく青空に消えてしまう物だという事です。
僕はこの司会者の方の一言を聞いて「常に謙虚で、初心を忘れていないで凄いなぁ。」とか、そういった月並みの印象よりも、素直に目の前のその方のファンになりました。
どんな職種に限らず、こういう人間性を直接目の当たりにする瞬間が、『良い先輩から学ぶ』という事だと、経験上僕は実感を持って言う事ができます。
今後この方の番組に呼んで頂ける機会があったら、番宣関係なく是非出演してみようと思います。(バラエティこそ倍緊張しますが。)
ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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