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小麦粉
石臼で小麦を挽くという水車小屋まで、ボローニャから車を走らせること約一時間。山間の緩やかなカーブから細い砂利道を川に向かってくだっていくと、その建物が現れる。住居や家畜小屋などを併設している17世紀の石造りの建物で、パッと見では水車小屋とはわからない。
建物の一部が小さな販売所になっており、心を踊らせながら内に入ると、まず目を引くのがずらり並べられた素朴な焼き菓子たち。どれも美味しそう!と思わず叫ぶと、店のおばさん(オーナーのファビオさんのお母様)に全部試してみては?と勧められる。大きな紙袋に一つずつ入れてもらってるあいだ、石造りの暖炉のあるこの部屋をぐるりと見回すと、パンやジャム、豆、そして小麦粉の袋も並んでいた。小麦粉もパスタ用、菓子用、パン用、全粒粉など種類が沢山あり、ついつい色々と購入してしまった。
水車を維持する難しさ、田舎での暮らしのことなどを伺っていると、水車も見ていって!と誘われ、現役で働く400歳の石臼を見ることができた。天井の低い薄暗い部屋だったが、その大きさと迫力に魅了され、ため息しか出なかった。
そんな貴重な小麦粉を大切に日本に持ち帰り、さて、生パスタ作り。こねている時点でその香りをしっかりと感じる。もちろん味もよく、秋に搾った新鮮なオリーブオイルだけで和え、パルメザンチーズを削った。シンプルだけど最高の組み合わせ。この上ない幸せである。
塩見 奈々江
しおみ ななえ/1983年東京都渋谷区生まれ。幼児期をイタリア、イギリスで過ごし大学進学でフィレンツェに渡り10年間暮らす。 現在は足利市の里山と東京の2拠点で暮らしながら、展示会やネットなどでヨーロッパの古道具を扱うBAGATTOを営む。
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