日本盲教育史研究会 第9回ミニ研修会in足利
我が国最古の木造二階建ての盲学校校舎「県立足利盲学校旧校舎」の足跡を辿る
日本盲教育史研究会主催による「ミニ研修会」が、5月27日、3年ぶりに足利市で開催された。同研究会では本総会を年に2回、ミニ研修会を年に1回のペースで開催しており、今回は通常を上回る約50名の参加があった。足利市からは19名、その他福岡、京都、静岡、神奈川、東京など全国からの来足。
今回足利市を研修会の地に選んだ理由の一つは、足利市には全国で唯一現存する木造二階建の盲学校校舎「足利盲学校旧校舎」(昭和6年竣工)があること。「同校舎の保存を願う『足利の近代化遺産を考える会』の活動の一助になればとの思いがあった」と、同研究会事務局長の岸博実氏は語る。
当日は、10時から足利市生涯学習センターにて、足利市文化財愛護協会理事 齋藤憲司氏による「足利盲学校校舎保存の意義と運動の歩み」の講話が行われた。
その後同市内を歩くフィールドワークでは、足利盲学校旧校舎、同校校地の変遷先、さらに盲人教育の義務教育化を牽引し、栃木県立盲学校初代校長を務めた、澤田正好氏顕彰碑などを巡った。昨年秋、法玄寺に建立された同顕彰碑には、「視覚障害者教育の先覚者」である澤田正好氏の生立ちや、点字投票の実現など、視覚障害者に向けた数々の偉業が刻まれいる。視覚障害を持つ研修会参加者は、顕彰碑に手を当て澤田氏の功績を感じていた。
フィールドワークのゴール地点は、足利盲学校旧校舎。この校舎を3Dプリンタを使用した模型として残そうと、鶴見大学文学部元木研究室の学生と元木章博教授が、同研修会に参加し、校舎のデータを集めていた。
同研究室では、視覚障害の方に向けた、手で触れる校舎周辺立体地図の制作も担当。
また校舎脇の現・足利市視覚障害者福祉ホームには、澤田正好氏の胸像があり、氏の姿を手で触れて確認した。
午後は、再び足利市生涯学習センターに戻り、齋藤憲司氏による「澤田正好と盲教育」、元群馬県立盲学校教諭 香取俊光氏による「群馬盲の資料室と両毛の盲学校の展開」の講話が行われた。
大正6年8月、澤田正好氏によって私立足利盲学校が開校され、後の義務教育化へと繋げ、盲人教育の道が切り開かれた。齋藤憲司氏により、澤田正好氏の功績が紹介され、香取俊光氏からは、群馬県・栃木県それぞれの盲学校の展開、明治から昭和期にかけて使用された盲教育の資料の解説が行われた。
参加者は一日を通して、北関東の盲人教育の歴史について理解を深めた。