〜 ◯ 点と点で、結び結ばれ。 ●〜
皆さん、ちょっとだけ、カバンの中にある自分のお財布を思い出してみてもらえますか?毎日よく使うものなので、きっと中身のカードの配置等まで詳しく思い出せるのではないかと思います。
では、友人のお財布はどうでしょうか?
どなたか「あの人はああいった財布を使ってるな。」という誰かのお財布をパッと思い浮かべる事はできますでしょうか?
僕は、『とあるブランド』のお財布を使っています。
去年、ひとつ前に使っていたお財布が長年使っていた事もあり遂に壊れてしまい、「新しいのを見つけなくてはいけないなぁ。」と思っていた矢先にドラマの撮影でシンガポールを訪れた際、何気なく立ち寄ったそのブランドのお店で一つの財布と出会いました。丁度、そのブランドが僕が大好きな日本人のアーティスト・草間彌生さんとコラボレーションしているシーズンで、店内はバッグから小物に至るまでご本人の世界観が所々に散りばめられていました。
突然の出会いだった事もありしばらく悩んだのですが、しっかりとしたブランドの物は長く使えますし、その上その場で他の国の店舗在庫をネットで調べてみた所、なんと在庫があるのが日本を含めたアジア圏で僕がいるそのシンガポールの一店舗だけという表示が目に入ってきたので、そういった偶然の縁もあり僕はその財布を購入する事に決めました。
僕はこの財布を使い始めてから、面白い発見に遭遇する事になります。
僕が購入した財布は、そのブランドのシンボル的なデザインを下地に、これもまた草間彌生さんの代表的な作風であるドット柄がカラフルに散りばめられているデザインなのですが、そのドット柄が、まさに今筆から絵の具が財布の表面へ落とされた様な加工がしてある、大胆なデザインの物です。
そのお財布をお会計の時に出す際に、時々友人からこんな事を言われる現象が出てきました。
「それ、自分でやったんじゃないよね?」
この一言、毎回言われる訳ではないのですが、もう購入してから1年以上経つ今でもこう言われた相手をハッキリ思い出せるくらい、少数回の出来事です。
ふと思い返すと、ひとつ分かった事がありました。
それは、僕のお財布にこの反応を寄せてくれる相手というのは、皆揃って僕の事をよく分かってくれている極めて親い存在であるという事。
「勿論自分でやったんじゃないのは分かってるけど、あなたならやりかねないよね。」
皆、前述の一言を言った後に、このおまけコメントが付いてきます。
お財布を新調するに当たって全く予期していない出来事でしたが、自分が気に入った物を購入した結果、親い人が自ずとそこに出ている自分らしさに気づいてくれる。
そんなお会計の一幕は、何気ない日常の心を少し弾ませてくれる良き瞬間です。
「最初からこのデザインだよ。」
そう答える僕の顔はいつもどこかほころんでいることと思います。
ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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