稲づくり
二月の半ば過ぎ、春めいてきた陽気の中、真岡にある宇都宮大学農学部へ車を走らせた。米作りも今年で三年目、今までは苗を譲ってもらっていたが、今年は種から育ててみることにした。
毎年育てているのは「ゆうだい21」という宇都宮大学が開発した品種で種は抽選販売。応募をしてドキドキしながら待っていると、今年は多めにできたので全員にお分けできます、とのハガキが届き、ほっとした。手入れの行き届いた美しい畑の間を抜け、販売小屋へ辿り着く。引き取りに来ていた他の農家さん達は、みな大袋をいくつも車に積み込まれていたが、私達は小さな袋をふたつだけ。小規模で育てている方は少ないのかもしれない。
四月末、種を水に浸す。一週間、毎日水を取り替え、最後の日は40度くらいのお湯を使う。それを土の入った水稲育苗箱に移し替え、積み上げ発芽を待つ。が、ここでトラブル発生。発芽のタイミングを見誤って芽が伸びすぎて、箱が上下でくっついてしまった。しかも下の段には陽がささないので、すでに5~6センチ育った芽がもやしのように真っ白!慌てて全ての箱を平に並べたら、驚くことに3日ほどで青々とした芽になってくれた。
昨年の手植えが大変すぎて今年は機械で、と思っていたが、手植えを楽しみにしていると東京の友達数名から連絡が入る。田植えが終わっている近所の田んぼを横目に、どうしたものかとまだ悩んでいる。
塩見 奈々江
しおみ ななえ/1983年東京都渋谷区生まれ。幼児期をイタリア、イギリスで過ごし大学進学でフィレンツェに渡り10年間暮らす。 現在は足利市の里山と東京の2拠点で暮らしながら、展示会やネットなどでヨーロッパの古道具を扱うBAGATTOを営む。
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