〜 旭川ぬくもりエクスプレス 〜
「 すみませんねぇ。ありがとうございます。」
札幌から旭川に向かう特急列車ライラック。
僕の一つ後ろの席で1人のおばさんと車掌さんがこんなやりとりをしているのが耳に入ってきた。
2024年、僕は旭川での撮影が今年の仕事始めとなり、車窓の向こうに広がる夜の雪景色の中、時々鳴る汽笛と共に北海道の大地を進んでいた。
札幌を出発して約1時間40分ほど、列車はもうすぐ終点の旭川に到着する。
そんな頃聞こえてきたのが、このお二人の会話だった。
車掌さんが少し大きめの袋を両手で席に座る乗客のおばさんに手渡している所だった。
「なるべく温度が低い所には置いといたんですが。途中の駅で雪を入れておきましたんで。」
どうやら、おばさんが冷蔵が必要なお土産が入った袋を、車掌さんに頼んで暖房の効いている車内とは違う別車両のどこかで預かっておいてもらっていたらしい。
バッグの手持ち部分から、口が閉じられ丸くなった、雪の入った白いビニール袋が見えた。
北の大地を覆う雪の中でも、人の心はどこまでも温かい。
車窓から雪の中の駅の様子を見ていると、自分が異郷に来た実感が心によぎります。