足利市立美術館(同市通二丁目)で、近刊「ゆうやけにとけていく」(小学館、2023年)が今年の第29回日本絵本賞大賞や第73回小学館児童出版文化賞を受賞するなど絵本作家として大人気のザ・キャビンカンパニーの世界を余すことなく紹介する企画展「大絵本美術展童堂賛歌」が開かれている。初期から現在まで生み出した絵画、絵本原画、立体作品、新作の巨大壁画などが館内いっぱいに展示され、訪れる人たちを世界にひき込んでいる。
ザ・キャビンカンパニーは2009年、ともに大分県生まれの阿部健太朗さん(1989- )と吉岡紗希さん(1988- )夫妻によるユニット。 大分県由布市内にある廃校の小学校を拠点に制作を続け、これまでに40冊以上刊行された絵本を始め、さまざまな方法で独自の作品を生み出している。二人が生み出す絵本は数々の賞を受賞。「NHKおかあさんといっしょ」の「しりたガエルのけけちゃま」のキャラクターデザインや歌手あいみょんさんのツアーパンフレットを手掛けるなど活躍している。今回の企画展は結成15年を機に開催する大規模個展で平塚市美術館、足利市立美術館、千葉市美術館、最後は地元の大分県立美術館で締めくくる巡回展。
二人は21年に足利市立美術館で作品を展示しており、その際行ったワークショップで子どもたちと一緒に制作した作品が今回、同館エントランスに展示され来場者を出迎える。展示は7つの章で構成され、初期の絵画や造形、アニメーションの世界、「けけちゃま」をはじめとした企業や団体とのコラボレーション作品、JR大分駅に設置されSNSへの投稿により「バズった」という「キメラブネ」などの立体作品、壁一面に広がる絵本の原画、アトリエをひとつの作品として再現したコーナー、そして新作で横14㍍の大作「童堂賛歌」が展示室いっぱいに広がる。
9月15日には阿部さん、吉岡さんによるオープニングトークが行われ、子どもを中心に130人が参加。二人は作品を生み出した背景やそのときの気持ち、アトリエなどについて解説。質問コーナーもあり、子どもたちから出る「どんな色が好きですか」「どんな気持ちで書いていますか」などの質問にていねいに答えていた。
同展は11月4日まで。月曜および10月15日休館。観覧時間は午前10時から午後6時。観覧料は一般710円、高校・大学生500円、中学生以下無料。学芸員によるギャラリートークや鑑賞ワークショップも予定されている。詳しくは同館ホームページで。
問い合わせは同館(電0284-43-3131)へ。